人気品種のプリミティーヴォ!ジンファンデルとの違いはどこにある?

 


イタリアのワイン銘醸地として名高い、プーリア州。

同州では、プリミティーヴォと呼ばれる黒ブドウから数多くの偉大なワインが生み出されていることで知られています。

 

一方、このプリミティーヴォはカリフォルニア州の主要品種のひとつ、「ジンファンデル」と同じブドウ品種だと言われており、その違いやルーツについて疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

 

本記事では、プリミティーヴォとジンファンデルの基本情報、違いなどについて解説していきます。

 

 

プリミティーヴォとジンファンデルは同じ黒ブドウ品種

 


プリミティーヴォとジンファンデルは、名前は違いますが同一品種だと考えられています。

 

同一品種ということは、呼び名は違えどそのブドウの個性は全く一緒ということです。

 

1990年代後半、カリフォルニアにあるカリフォルニア大学デービス校にてDNA分析が行われた結果、この二つの品種は遺伝的に同一であることが証明されました。

 

あまり見かけることはありませんが、この事実によって1999年以降イタリアの生産者はプリミティーヴォではなく、「ジンファンデル」といった名前を利用することもできるようになったと言います。

 

ただし、プリミティーヴォとジンファンデルがいくら同一品種とはいえ、栽培環境や生産者の哲学、ブレンドされる品種、生産国におけるワイン法の規定によって個性に違いが出てくるのは当然です。

 

ブルゴーニュのピノ・ノワールとドイツのシュペートブルグンダー、イタリアのピノ・ネロもやはり同じピノ・ノワールでありながらも、ワインとなった際にその味わいに違いが感じられます。

 

プリミティーヴォとジンファンデルについても、同じとはいえ、その歴史や特徴、どういったワインが生産されているかの違いを知ることが大切になってくるのではないでしょうか。

 

 

プリミティーヴォとはどんなブドウ品種なのか?

 

プリミティーヴォとはどんなブドウ品種なのか下記の内容にまとめました。

 

・プリミティーヴォとは?

・プリミティーヴォの歴史

・プリミティーヴォの特徴について

・プリミティーヴォの味わい

 

それぞれ解説します。

 

プリミティーヴォとは?

 

プリミティーヴォとは、イタリアのプーリア州を中心にカンパーニア州などイタリア南部で多く栽培されている黒ブドウ品種です。

 

プリミティーヴォはほかのブドウよりも先に熟すと気がついたイタリアの修道士が、ラテン語における早熟といった意味合いの言葉が由来して名付けられたと考えられています。

 

アルコール度数の高いパワフルで果実味の強いワインを生み出すことで知られている品種ですが、収穫時期や醸造スタイル、熟成期間などによってさまざまな表情のワインを生み出すところが特徴です。

 

プリミティーヴォの歴史

 

プリミティーヴォの歴史は古く、その祖先は紀元前約6000年に遡るとも言われています。

 

プリミティーヴォがイタリアに持ち込まれたのは1700年代と考えられており、発祥の地と言われるクロアチアからアドリア海を越えて南イタリアへとやってきました。

 

当時、ツルリェナク・カシュテランスキ、トリビドラグと呼ばれていたプリミティーヴォですが、上記でお伝えしたように早熟であることからラテン語の早熟に由来する「プリミティーヴォ」に改名されたとようです。(現在でもクロアチアではツルリェナク・カシュテランスキと呼ばれており、プリミティーヴォと同一品種です)

 

プリミティーヴォは19世紀から20世紀頃までは、ワインにコクを与える目的のブレンド用として活用されていたことから、当時そこまで品質の高いワインを生み出すブドウと考えられていませんでした。

 

そんな中、1990年代になるとヨーロッパ政府がEU内で製造される低品質ワインを減らす目的で、イタリア(とくに南部)のブドウ栽培者にブドウ樹の抜根目的の金銭的奨励金を提供したことから、プリミティーヴォの樹が大量に引き抜かれます。

 

しかし、ジンファンデルと同一品種であることがわかったこと、プリミティーヴォの高い品質に注目していた生産者たちの努力などによりブドウの植え付けが増加。

 

10年間で40%栽培面積が増加するほどになりました。

 

プリミティーヴォの特徴について

 

プリミティーヴォは、その名の通り早く熟すブドウ品種であることからイタリア国内では8月頃から収穫時期を迎えます。

 

これはイタリアでも最も早い収穫時期と言われており、イタリア北部の主要品種ネッビオーロの収穫時期とは数ヶ月もの違いがあるところが特徴です。

 

プリミティーヴォはアルコール度数が高く果実味溢れたパワフルなワインを生み出すことから、一般的に3から4年の熟成を経てリリースされることが多い傾向にあります。

 

主に辛口ワインですが、デザートワインやブレンド用としても活用されます。

 

プリミティーヴォの主要産地はプーリア州マンドゥーリで、同産地のコミューンでは高い品質の偉大なワインを古くから生産していることで有名です。

 

基本的にはプリミティーヴォを単一品種で仕込むフルボディタイプの赤ワインで、長期熟成されたものも見受けられます。

 

ちなみに、プリミティーヴォにはバイオタイプが存在しており、「プリミティーヴォ・ディ・ジョイア・デル・コッレ」と「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア」が注目される存在です。

 

DOCとしても、プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリアDOC、プリミティーヴォ・ジョイア・デル・コッレDOCが有名であることから、偉大なプリミティーヴォを楽しむ際にはこの二つのDOCをチェックすると良いでしょう。

 

ちなみに、リクオローゾ・セッコ、リックオローゾ・ドルチェと呼ばれるフォーティファイドワインもプリミティーヴォからつくられています。

 

プリミティーヴォの味わい

 

プリミティーヴォは、タンニンがしっかりとしたフルボディタイプの赤ワインを生み出します。

 

チェリーやブラックベー、ストロベリーといった果実、レーズンやイチゴジャムなど甘さを感じさせるアロマも特徴です。

 

またスタイルによっては、タバコや下草、ハーブといったアロマも混ざることから、ストレートに果実味を楽しめるだけではない、複雑な味わいのプリミティーヴォも存在します。

 

アルコール度数が高く、14%から高い場合は16%にもなるほどです。

 

やや甘さを感じますが酸が豊富で、その酸味が高いアルコール度数を下支えしているといった向きもあります。

 

プリミティーヴォのペアリングは至ってシンプルです。

 

熟した果実とタンニン豊富なフルボディといった特徴から濃厚なソースを使った肉料理、ベーコンやパンチェッタ、チーズを使ったパスタなどとの相性が抜群。

 

また、この特徴から日本の甘辛ソースと意外に相性が良く、お好み焼きやソースを利用したトンカツなどの揚げ物、たこ焼きとも合うと言われています。

 

ケチャップソースの豚肉のソテーやトンテキなど、日本らしい洋食とも合わせやすそうです。

 


ジンファンデルを深掘り

 


プリミティーヴォとジンファンデルは、上記でもお伝えしたように同一品種です。

 

そのため、ブドウが持つ特徴についてはほとんど一緒なのですが、その個性にはやはり若干の違いが見られます。

 

また、なぜプリミティーヴォがアメリカ・カリフォルニア州に広まっていき、ジンファンデルとなり、プリミティーヴォを凌駕する名声を得たのかも知っておくと良いでしょう。

 

ジンファンデルについて下記にて解説していきます。

 

プリミティーヴォとジンファンデルの味わいの違いはどこ?

 

イタリアのプリミティーヴォは、果実味豊かでパワフルな味わいが特徴ですが、ひとつ「酸味」も際立っているといった特徴があります。

 

甘くボリューミーな中にも、洗練された酸味を兼ね備えていることから、比較的エレガントスタイルの赤ワインが生み出されていると考えられるでしょう。

 

一方、ジンファンデルは相対的に酸味がそこまで強くないため、まろやかで赤ワイン初心者でも飲みやすい印象のものが多い傾向です。

 

また、ジンファンデルは冷涼な産地では赤系果実のアロマが強く、温暖な産地はスパイスのニュアンスが出てくると言われています。

 

ちなみに、アメリカでは、ジンファンデルとプリミティーヴォは別の品種名として記載することが法律によって決められているようです。

 

一方、カリフォルニア州では「ホワイトジンファンデル」と呼ばれるワインがありますが、これはジンファンデルの白ワインバージョンではなく、中甘口のロゼワインのことです。

 

1970年代にナパ・ヴァレーのサッター・ホーム・ワイナリーが淡く色づいた甘いロゼワインを「ホワイトジンファンデル」と名付けて売り出しており、これが大ヒット。

 

そこからさまざまな生産者が「ホワイトジンファンデル」を売り出し始めたと言われています。

 

カリフォルニア州では、ジンファンデルの赤ワインよりも売り上げが高いといった実情もあるようです。

 

ジンファンデルの歴史

 

ジンファンデルは、1820年代にニューヨーク州ロングアイランドの苗床所有者ジョージ・ギブスによってアメリカに持ち込まれたと考えられています。

 

同氏はオーストリア・ウィーンの苗木保管所から穂木をアメリカに持ち込んだとされていますが、上記でお伝えしたようにジンファンデル(ここではプリミティーヴォをジンファンデルと表記)はクロアチア原産のブドウであり、古くオーストリアがクロアチアを統治していた時代があったことからブドウの樹がウィーンの苗木保管所に存在していたと考えられます。

 

その後、「ブラック・ジンファーデル・オブ・ハンガリー」として苗木が売り出されており、アメリカ北東部で人気を博すことに。

 

1832年、それに目をつけたボストンの苗木商がこのブドウの苗木を販売するために広告を出すのですが、その時に「ジンファンデル」といった名で売り出したことが、ジンファンデルの名の由来だと考えられているようです。

 

1835年以降、アメリカ北東部でジンファンデルは温室栽培される人気のブドウとなっており、その頃にフレデリック・マコンドレーといった人物がジンファンデルのブドウ樹をカリフォルニア州に持ち込みました。

 

ジンファンデルは特殊な設備と資源を必要としなかったことから、ゴールドラッシュ後にカリフォルニアで生産量が急増します。

 

その後のフィロキセラ禍によってカリフォルニア州のブドウ畑は壊滅状態に陥りますが

その頃に台木として植え替えられた最初のブドウがジンファンデルだったのです。

 

当時の国勢調査によるとブドウの3分の1がジンファンデルだったとも示唆されており、カリフォルニア州における主要品種として長年大切にされることになります。

 

イタリア移民がジンファンデルのブレンドワインを開発したり、ホワイトジンファンデルの登場、プリミティーヴォとDNA分析の結果、遺伝的に同一であることなど、ジンファンデルは常にカリフォルニア州におけるワイン業界の話題の中心にいたと考えられるでしょう。

 

今日のジンファンデルは、カリフォルニア州で3番目の栽培面積を誇り、ほとんどのカウンティで栽培されています。

 

同じブドウ品種であっても、その裏にあるストーリーや扱われ方は大きな違いがあることがわかるエピソードだったのではないでしょうか。

 


おすすめのプリミティーヴォ

 

ここからは、おすすめのプリミティーヴォを紹介していきます。

 

洗練された高品質なプリミティーヴォは、イタリア南部から生み出されていることは間違いありません。

 

ぜひ、気になるプリミティーヴォがあった方はお店のラインナップに加えてみてはいかがでしょうか。

 

 

Varvaglione Primitivo Papale Linea ヴァルヴァリーネフパパーレオーロ

 

プーリア州、ターラントに一位置する、「ヴァルヴァリオーネ」。

 

「ヴァルヴァリーネプリミティーヴォパハーレ」は、パパーレ畑の中でも最高の区画で丹念にセレクションしながら手収穫されたプリミティーヴォのみを使用した偉大な1本。

 

平均樹齢が50から60年の古木から収穫された凝縮感のあるブドウは、ワインにしっかりとしたストラクチャーを与えます。

 

ルビーレッド、ジャムや森の果実、ハーブ、カカオなど複雑なアロマが特徴的。

 

ストラクチャーがしっかりとしつつもまろやかな丸みを感じる、エレガントさを感じられるプリミティーヴォです。

 

 

PLV Tator Primitivo di Manduria ポッジョレヴォルピタトール プリミティーヴォ

 

1970年代にアルマンド・メルジェにより創立、息子フェリーチェが1990年代初頭に革新的設備を導入したことでスタートしたブランド、「ポッジョ・レ・ヴォルピ」。

 

広大な土地から多種多様なスタイルのワインを生み出す同ワイナリーは、イタリアワイン業界の中でも大注目される存在です。

 

「タトール・プリミティーヴォ・サレント」は、プリミティーヴォをオークバリックで10ケ月熟成させたこだわりの赤ワイン。

 

美しいガーネットレッド色の外観。

 

シナモンやアーモンドの詰め物をした乾燥イチジクを思わせるアロマ、赤系果実のジャミーなアロマも加わります。

 

まろやかで構造の大きい豊満さを感じながらも、複雑さを楽しめる貴重な1本です。

 

 

Mare Magnum Mammoth Zinfandel マーレマンニュムマンモス

 

ワインコンクールにて数多くの受賞歴を持つ、国際的にも注目されているワイナリー「マーレ・マンニュム」。

 

サクラ・ジャパン・ウイメンズ・ワイン・アワードではゴールド、インターナショナルワイン&スピリット コンペティションではシルバーメダル、ムンドゥス・ヴィーニで金賞など、輝かしい経歴を持つ名門です。

 

そんな同ワイナリーが手がけるのは、「マーレ・マンニュム マムート ジンファンデル」。

 

フレンチオークを3から4回目使用し、アメリカンオークの新樽で8ヶ月間熟成させたこだわりの1本です。

 

非常にリッチなフルボディのワインに仕上げられており、濃い色の果実、プラム、スパイスやトーストしたオークのアロマをしっかりと感じることができます。

 

ステーキやバーベキューなど、味わいの強い料理とのペアリングがおすすめです。

 

 

Masso Antico Primitivo Appassito マッソアンティコプリミティーヴォ

 

プーリア州とアブルッツォ州でワインメーカーのダニエレとカルロによって生み出された、「マッソアンティコ」。

 

「マッソアンティコプリミティーヴォ」に使用されるプリミティーヴォは、伝統の「アルベレッロ」仕立てで栽培されています。

 

手間がかかり収穫量も減ることから、この仕立てをする生産者はごく一部ですが、凝縮感のある品質の高いプリミティーヴォが収穫可能です。

 

「マッソアンティコプリミティーヴォ」は、ブドウの一部を半乾燥状態にして、濃厚な果汁を醸造。

 

フレンチオークで約6カ月熟成を経てリリースされています。

 

プルーンやイチジクを思わせるアロマ、スパイシーな余韻も特徴的です。

 

ルカマローニでは、満点の最高評価を3年連続獲得するワイン。

 

その品質の高さは、イタリアワインのプロたちも認めています。

 

 

まとめ

 

プリミティーヴォは、イタリアワイン好きであれば一度は飲んだことがある有名な品種です。

 

一方、カリフォルニア州で有名なジンファンデルも人気の品種であり、何度も楽しまれた方は多いでしょう。

 

同一品種と言われているこの二つの黒ブドウですが、深掘りしていくと同じでありながら味わいや歴史に違いがあることがわかります。

 

よりその違いを知りたい方は、ぜひプリミティーヴォとジンファンデルを飲み比べしてみてはいかがでしょうか。

 

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