ミラノのカーニバル伝統お菓子

イタリア全土で大きなお祭りの一つ「カーニバル」。世界3大カーニバルの一つでもあるヴェネツィアのカーニバルは有名ですが、イタリア各地で様々なイベントや伝統お菓子も登場します。


筆者の住んでいるミラノでは、1月の中旬からカーニバルの時期だけ楽しめる伝統お菓子が街中で見かけるようになります。店頭にお菓子が並ぶとカーニバルが近づいていることがわかり甘い香りは食欲をそそります。

今回は、ミラノで味わえるカーニバル伝統お菓子をご紹介します。

 


カーニバルとは


 

「カーニバル」という言葉は、肉を取り除くというラテン語の「Carnem levare」に由来しており、宗教的伝統に従って肉が禁止される四旬節前の期間を指します。そのため、ローマ時代には、断食が始まる前に盛大な宴会で祝いました。カーニバルの最も特徴的でユニークなドレスアップの伝統もここに原点があるそうです。

 


ミラノのカーニバル


 

2023年のカーニバル)

 

毎年2月から3月ごろカーニバルが開催され、イタリア各地で通常は火曜日に終わりますが、ミラノでは他の都市より遅く土曜日まで続きます。カーニバル最終日は、土曜日ということもありミラノ市内でも子どもたちを中心に多くの人が仮装します。ミラノ大聖堂や公園などでは、人々がコリアンドリと呼ばれる紙吹雪を舞い上げ、子ども向けの無料ミニシアターも開催されます。今年のミラノのカーニバルは、217日までです。

 


カーニバル伝統お菓子の起源

 

歴史的には、古代ローマでサートゥルナーリア(今日のカーニバルに相当するイベント)の際に、豚の脂で揚げたお菓子を提供していたそうです。キリスト教時代には、四旬節の前に脂肪を蓄えるためにパンのようなお菓子を大量に揚げる伝統があったそうです。そのため、現在もカーニバル伝統お菓子のほとんどが揚げたお菓子となっています。

 


ミラノで味わう伝統カーニバルお菓子


 

カーニバルの時期は、街中がコリアンドリの紙吹雪と甘い香りの伝統お菓子で満たされます。ベーカリーやペストリーショップ、バール、食料品店には様々な種類のカーニバルのお菓子が並び、マスクの形をしたクッキーも登場します。

 

 

■キアッキエーレ|Chiacchiere 


キアッキエーレは、カーニバルを代表するドルチェです。

砂糖をまぶした繊細なペストリーは、ギザギザの周りで不規則な形をしています。

イタリアの各地域には、それらを表す独自の名前があり、トスカーナ州では「チェンチ(Cenci)」、ピエモンテ州では「ブジエ(Bugie)」などと呼ばれています。ミラノでは、キアッキエーレと呼ばれ、カーニバルに欠かせないドルチェです。

名前の意味に込められている理由の一つに、イタリア語で「おしゃべり=Chiacchiere」という意味があり、食べながらおしゃべりをするという由来があるそうです。

 

キアッキエーレの伝統は、豚の脂で揚げた甘いケーキ「フリクチーリア(frictilia)」に遡ります。古代ローマでも、カーニバルの時期に作られていたと言われています。

 

キアッキエーレは、小麦粉ペーストを揚げて粉砂糖をまぶして作られます。

地域によって呼び名は異なりますが、小麦粉、砂糖、バター、卵という基本的なレシピは変わりません。地域によっては、白ワイン、マルサラ、ブランデー、サンブーカなどを加え伝統的なレシピにバリエーションを入れています。

そして飾り付けに欠かせない粉砂糖を上から振りかけます。

 

 

■フリッテッレ|Frittelle

 

カーニバルを特徴づけるごちそうとして、フリッテッレがあります。ミラノでは「トルテッリ(Tortelli)」と呼ばれ親しまれています。

ドルチェの職人であるパスティッチェリは、独創的なバージョンのフリッテッレを提供するため店舗により異なるフレーバーを追加します。最もシンプルなものは、手のひらサイズの丸いふんわりした中に詰め物がないフリッテッレです。異なるバージョンでは、フリッテッレの中にカスタード、シャンティークリーム、チョコレートクリーム、ピスタチオクリームなどを詰めたものがあります。

 

フリッテッレは、小麦粉、バター、水、塩、卵というシンプルな材料だけで作られています。揚げるときに油をあまり吸収しないので、素朴な味わいが特徴です。

 

カーニバルの時期は、バールやペストリーショップでも提供しているのでカッフェの時間に一緒にいただきます。

 

 

■カスタニョーレ|Castagnole 

エミリア州が発祥ですが、現在はイタリア全土に広がりました。栗を意味するカスタニョーレは、見た目が栗を彷彿とさせる形から名前が付けられました。

フリッテッレよりも小さく、丸い一口サイズのやわらかいドーナッツのようなドルチェです。店舗によりオリジナルのカルタニョーレも登場します。

 

主な材料は、小麦粉、卵、砂糖、バター、スプーン一杯のアニスリキュールです。生地から作った小さなカスタニョーレを油で揚げ、砂糖をたっぷりと振りかけます。

そのままでも、外は香ばしく中はやわらかく美味しいですが、チョコレートをかけて食べたり、カスタードを詰めたり、ホイップクリームを添えたりもします。レモンクリームまたはマスカルポーネを詰めるのもおすすめです。

 

 

 

■ブジエ・リピエレ|Bugie ripiene

 

ミラノのお祭り時期特有のブジエ・リピエレは、キアッキエーレに詰め物をしたバージョンの揚げ菓子です。

 

中には、たっぷりのイチゴジャムとオレンジマーマレードなどがこぼれ落ちるほど入っています。詰め物は、お店ごとにカスタマイズされ様々なフレーバーがあります。

 

生地を薄いシート状に伸ばし、おいしいジャムを詰めてラビオリの形に整えペストリーカッターで四角にします。油で揚げ、最後に粉砂糖をたっぷりまぶします。中心部が柔らかく甘い香り豊かな一品に変わります。

 

アクセントに、オレンジの皮のすりおろしやバニラパウダーを少し加えて生地に風味を付けることもできます。マルサラ、ヴィン・サント、パッシートなどの甘いリキュールを加えるのもおすすめです。

 

 

味と喜びで祝う最高のカーニバルドルチェ




今回紹介したカーニバルのお菓子は、クラシックなものに好みのフレーバーを加えて多くのバリエーションを生み出すことができます。

1月から3月ごろミラノへ行った際は、ぜひ様々な店舗の味を試してみてください。


見た目は同じでもアクセントに異なるフレーバーやパッケージ包装など店舗ごとのアイデアやデザインが際立って見えます。ミラノ中のベーカリー、ペストリー、さらには大手食品チェーン店の棚でも購入できます。

 

ミラノ以外にも、カーニバル期間中はイタリア全国各地で限定の伝統お菓子が楽しめるのでイタリアへ訪れた際は味わってみてくださいね。