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アンフォラブーム到来中!アンフォラとはどんなワイン容器?
木製の樽、ステンレスタンク、コンクリートタンクなどワインを醸す、または熟成・保存させる容器にはさまざまな種類があります。 その中でも、近年注目を集め出しているのがアンフォラと呼ばれる容器です。
イタリアワインにおいてもアンフォラでワインを醸す生産者が増加傾向にあり、ひとつのブームとして捉えられています。 本記事では、アンフォラの基本的な情報、さらにより深掘りしたい内容をお伝えしていきましょう。
アンフォラの基本情報
アンフォラの基本的な情報について下記の内容にまとめました。 ・アンフォラとは? ・アンフォラの歴史について ・アンフォラの作られ方 それぞれ解説します。
アンフォラとは?
アンフォラとは、素焼きの容器のことです。 具体的には持ち手のついて運搬できる陶器製の素焼き容器がアンフォラと呼ばれており、同じ容器でも素焼きの甕であるジョージアのクヴェブリは蜜蝋が内側に塗られており運搬されません。
用途や形状などに違いはありますが、基本的には同じものと考えて良いでしょう。
アンフォラはもともとさまざまな液体を運ぶために作られたもので、ワイン用に使用されるアンフォラは持ち手がなかったり卵形や底が平らだったり、容量もさまざまだったり、用途に応じた形状となっています。
歴史が非常に古い懐古的な製造方法として忘れ去られていましたが、近年オレンジワイン の流行やナチュラルな造りのワインの台頭、木樽やステンレスタンクでは得られないワインへの効果などが期待されリバイバルブームが起きているといった状況です。
アンフォラの歴史について
アンフォラは、ワインの発酵・熟成容器として最も古いと言われています。 その起源には数多くの説がありますが、ジョージアがその起源と言われており紀元前7000年前には使用されていたと考えられているようです。
また、ポルトガルやスペインでも古くから使用されている容器としても知られています。 とある歴史家によると粘土の扱いを覚えたグルジア人が新石器時代にアンフォラのようなワイン容器を作り始めたことが始まりだと言います。
ちなみに、ジョージアではクヴェブリ職人はメクヴェヴレと呼ばれ、非常に数少ない貴重な存在として扱われています。 地中に埋めるジョージアのクヴェブリとは違い、アンフォラは持ち手が付いており製造や熟成、保管だけでなく輸送のために製造されたものです。
ローマ帝国や古代エジプト王国での国王であったファラオの時代に広く普及したことで知られており、アンフォラは物資を運ぶための最も優れた手段として活用されていました。 その後、木樽などの登場でアンフォラを使用することが減っていき、ワイン業界ではほとんど忘れ去られた存在となります。
しかし、イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のヨスコ・グラヴナーによるアンフォラワインのブレイクや世界遺産への登録、ナチュラルな造りのワインへの注目、オレンジワインがトレンドとなったことで、近年注目を集めるようになりました。
アンフォラは世界中で統一された呼び名であり地域名ではありませんが、国や地域によって呼び名が違っているところがユニークです。 卵のような形状のアンフォラであるスペインの、「ティナハ」やポルトガルの「タルハ」、アルメニアでは「カラス」と呼ばれています。
イタリアやギリシャでは花瓶のようなアンフォラに、「オルチ」、「ジャーレ」と表記することもあるようです。 伝統的にアンフォラでワイン造りを行う産地、さらに新しくアンフォラを取り入れた生産者、より優れたアンフォラでワインを醸す生産者など、アンフォラを取り巻く状況にも大きな変化が訪れています。
アンフォラの作られ方
世界中には形状の異なるアンフォラが存在しますが、その原材料は粘土です。 コンクリートや砂岩などが使用されることもありますが、優れたアンフォラはそれに合う粘土を使用しなければなりません。
アンフォラを作る上で耐性のある粘度を使用していないと、すぐに破損してしまう恐れがあるからです。
アンフォラは長い時間をかけて乾燥させ層ごとに重ねていくなど、非常に手間隙かかる容器です。 燃焼も長時間行われ、職人の直感に応じて容器として活用できるか判断されます。
ジョージアでもクヴェブリを作るための専門学校などはなく、先人からの知恵と技術を伝承し、さらに類稀なるセンスの持ち主でないとメクヴェヴレになれないと言われているようです。
アンフォラワインについて
アンフォラでつくられるワインにはどのような影響があるのでしょうか。 アンフォラワインについて下記の内容にまとめました。 ・アンフォラでのワインづくりについて ・アンフォラの酸素透過について ・アンフォラでつくられたワインについて それぞれ解説します。
アンフォラでのワインづくりについて
アンフォラでのワインづくりは生産者に委ねられますが、主にアンフォラを使用する生産者は同様のプロセスにてワインを醸す傾向にあります。 まず、ブドウの果皮と果汁、種子などで構成されたマストをそのままアンフォラへと投入。 その後、果皮はアンフォラの上ずみ部分へと浮き、酵母や小さな種子は容器の底へと溜まっていきます。
一般的にアンフォラでワインが醸される場合、地中または日光が当たらない気温の低い場所が選ばれているようです。 アンフォラの形状から、ブドウの果皮が容器内を循環するため自然なピジャージュが行われていると考えられています。
自然酵母によってアルコール発酵が行われ、フェノール成分もしっかりと抽出されることからSO2に頼ることなく安定的な発酵を行うことが可能です。 アルコール発酵が終了した後、自然にマロラティック発酵が行われ、そのまま熟成されリリースを待つといった流れになります。
アンフォラの酸素透過について
アンフォラがあらためて注目されている理由のひとつに、樽熟成のようなおだやかな酸化熟成が可能であるといったところがあります。
フレンチオークの場合、ワインを1ヶ月程度熟成させると1リットル当たり、0.68mgの酸素を透過させると考えられています。
一方、アンフォラは焼成温度によって、月1リットル当たり0.4mgから10mg以上に調整可能です。 酸素透過は樽よりも多いものが多いですが、それを念頭に入れたおだやかな酸化熟成を行えば問題はありません。
さらに木製樽のように酸素透過の量が経時変化しないため、熟成始めの酸素透過度が同じで同期間熟成させたとしても、その酸化熟成の度合いに違いがあるところがポイントです。
また、アンフォラは木樽のように樽由来の香り成分やフェノール、そのほかの成分をワインに与えないため、ピュアな味わいをキープさせることが可能です。
アンフォラでつくられたワインについて
アンフォラでつくられたワインは、総じてダイナミックでありながら柔らかい果実、まろやかで素朴な味わいを楽しむことができます。 木樽熟成のような樽由来の成分が関与しないことや、ゆっくりと優しく発酵・熟成が進むため穏やかな印象になると考えられているようです。
ステンレスタンクは酸素接触を遮断するため非常に鮮明でフレッシュ、くっきりとした味わいを持ちますが、アンフォラは鮮明さを持ちながらも、どこかこなれたピュアな印象を持つと考えると想像しやすいでしょう。
また、アンフォラの場合は生産者によっても違いますがオレンジワインのように果皮と種子、果汁が一緒に醸されるため、複雑で独特のテクスチャーを感じることができます。 ちなみに、アンフォラでつくられたワインであってもあえてオークの破片などを使用し、あえてオークのような風味を加える生産者もいるようです。
イタリアにおけるアンフォラワイン
アンフォラでつくられるワインを語る上で、その起源と言われるジョージアは必ず話題に上ります。 そして近代のアンフォラワインはオレンジワインの生産者やナチュラルなつくりのワイン、あらたなアプローチを続ける革新的なワインメーカーといった部分が取り上げられるようです。
しかし、上記でも触れたように現代のアンフォラブームを築き上げたのは、イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の自然派ワインの巨匠ヨスコ・グラヴナーの存在でした。
同氏は1970年代初頭の頃は一般的なワインづくりを行っていたものの、1980年代後半に読んだ歴史本に登場したアンフォラ に魅了され、2001年にアンフォラを使用したワインをリリースします。 それが大きな話題となったことが、アンフォラワインブームのきっかけだったと語る有識者も少なくありません。
アンフォラの層は非常に薄いため破損を回避するため、同氏はジョージアと同様に地中にアンフォラを埋めて醸造しています。 メルローなどの国際品種から土着品種を使用したものなど、その自由な発想もまたリスペクトされている理由でしょう。
さて、その影響からイタリアでもアンフォラを使用したワインを多くの生産者がリリースするようになりました。 その中でも興味深いのが、トスカーナの粘土で作られるテラコッタ、またはスペインのアンフォラであるティナハを使用する生産者に分かれているようです。
ティハナは一般的なアンフォラよりも多孔質ではないため酸素透過量が少なく、より爽やかなワインを生み出すとされています。 さらにイタリアでは、トスカーナではテラコッタの風味を嫌ったトスカーナの会社 Drunk Turtleが採用したコッチョペストが話題です。
破砕テラコッタにモルタルを混ざて作られるアンフォラですが、その起源は数千年前に遡ることができるとされています。 より繊細な酒質になるとオレンジワインブームを後押ししているだけでなく、デザイン性が高いためオブジェ的な扱いでも活用可能です。 そのほか、アンフォラのみでつくられたワインではなく、樽で造られたワインとブレンドするといったユニークなアプローチをする生産者もいます。
ワインにアンフォラと木樽、両方の良さが取り入れられるため、より複雑で深みのある酒質になるとのことです。
また、ピエモンテ州にもバローロをアンフォラで醸す生産者がいます。 特別な塗料を使用して作っているなど、伝統的なアンフォラをそのまま使うのではなく、目指しているワインのスタイルに合わせてアレンジを加える生産者が多いところもイタリアにおけるアンフォラワインの興味深いところでしょう。
イタリアでもアンフォラワインがブームではありますが、ほとんどの生産者が、“流行っているから使っている”といったワケではないところがポイントです。
導入したところ、アンフォラによってユニークなワインができあがる。 だからといってアンフォラを盲目的に使用するのではなく、“道具”としてどのように活用するのか、生産者それぞれが自分たちが目指すワインを生み出すために工夫しているところが面白いところです。
おすすめのイタリアアンフォラワイン
ここからは、おすすめのイタリアアンフォラワインをいくつか紹介していきます。 今、アンフォラを使用してどんなワインがイタリアでつくられているのか、ぜひこれらを手に取って確かめてみてください。
Bajaj Roero Arneis バヤジロエロアルネイス
ピエモンテ州の有名ワイナリー、バヤジ。 「地球は先人の残した遺産ではなく後世に引き継ぐ為のローンである」を念頭に、持続可能な農業を20haの敷地で行う品質の高い自然派のワインをつくる注目生産者です。
「バヤジ ロエロアルネイス」は、ブドウをすべて除梗し1/4を圧搾し低温で2時間浸漬。 その後ステンレスタンクにて10日間発酵させた後、テラコッタのアンフォラで5か月熟成させています。 素晴らしい果実のふくらみと、完熟した黄色い果実や桃、可愛らしい白い花の風味が特徴の素晴らしいアルネイス。 鶏肉のインヴォルティーニ、小魚やイカのフリットなどとの相性が良い、フードフレンドリーな1本です。
Bajaj Roero Arneis バヤジランゲネッビオーロ
ランゲの方言で「あくび」や「居眠り」を意味するユニークなワイナリー、バヤジ。 アンフォラを絶妙に使い分ける名手としても知られており、イタリアを代表するアンフォラ使いの生産者として高く評価されています。
生産者曰く、特別な日にまるで「カルトの儀式」のように飲むのがネッビオーロ。 しかし、毎日でも飲めるよう口当たりの1本としてつくられたのが、「バヤジ ランゲネッビオーロ」です。
すべて除梗しステンレスタンクにてピークの温度に達したら18度で一晩でレスタージュ。 テラコッタのアンフォラ、使用済みバリック、ステンレスタンクを併用し、12ヶ月熟成させたテクニックが光る1本です。 飲み口がよくカジュアル、ただシンプルではなく説得力があり若いネッビオーロの魅力が詰め込まれた一本になっています。
Casabelfi Natural Mente Frizzante カーサベルフィフリッツァンテ
アルビノアルマーニ社と若きスターエノロゴ、マウリツィオ ドナディ氏が力を合わせ、2003年よりスタートしたワイナリー、カーサベルフィ。 残糖ゼロ、除草剤ゼロ、化学薬品の使用ゼロ、二酸化硫黄の添加ゼロといった厳格なワインづくり、土地の特徴を最大限に生かした古代の農業方法など、土地の個性を最大限表現するワインづくりを目指している注目ワイナリーです。
「カーサベルフィフリッツァンテ」は、サン・ポーロ・ディ・ピアーヴェの畑で収穫された、グレラを使用したフリッツァンテ。 柑橘系果実やトーストしたパンのようなフローラルでフルーティな香り、活き活きとした口当たりで程よいボディと程よい酸を感じられるピュアな1本です。
まとめ
アンフォラは粘土で作られた、なんとなく歴史のあるワイン容器。 そんなイメージで終わっていた方も多いのではないでしょうか。 しかし、アンフォラも奥深い世界があり、現代的な醸造と組み合わせた全く新しいワインも多く生み出されるようになりました。
とくにイタリア国内ではアンフォラを使用した新たなワインも多く生み出されており、これから新しいムーブメントを起こしそうな予感です。 ぜひ、これを機会にアンフォラで醸されたワインをチェックしてみてはいかがでしょうか。