ワイン用ブドウと日照量の関係とは?日光を浴びれば浴びるほど良い?

 

優れたワインをつくるためには、原料ブドウが上質であることが最低条件だと言われています。

 

ワインはユニークなことに、仕上がったワインのことではなく、原料ブドウについて語られることが多いお酒です。

 

そのため、ワインに興味を持つ方の中にはワインそのものよりも、ブドウ栽培に詳しい方も珍しくありません。

 

さて、そんな原料ブドウの質を高める栽培するためには、いくつかの理想的な条件が存在します。

 

本記事では、その中のひとつである、「日照量」について解説していきましょう。

 


ブドウ栽培における理想的な条件とは?

 

ワイン栽培における理想的な条件のひとつに、豊富な日照量があります。

 

ブドウ栽培と日照量について深掘りする前に、ほかのブドウ栽培における理想的な条件についておさらいしましょう。

 

ワイン用ブドウにおける理想的な条件は、大きく下記の2つに分けられます。

 

・気候条件

・土壌条件

 

まず、優れたワイン用ブドウを栽培する産地は緯度30度から50度の間にある、ワインベルトと呼ばれる間に位置しており、その中で極端な気候条件ではない場所であれば健全なブドウ栽培が可能だと考えられています。

 

まず、ワイン用ブドウを栽培する上で大切なのは気温です。

 

ブドウ生育期の平均気温が10℃から16℃と言われており、低温過ぎても高温過ぎてもいけないと考えられています。

 

また、地中海性気候のように乾燥していることが理想的ですが、水分ストレスがあまりにもかかることは品質低下に繋がるため、年間降雨量が500mmから760mmは必要です。

 

仮に降雨量が少ない産地では灌漑でブドウへの給水が行われます。

 

ちなみに優れたブドウ栽培が可能と考えられている気候として、下記3つが挙げられます。

 

・地中海性気候

・大陸性気候

・海洋性気候

 

イタリアは地中海性気候の恩恵を受けていますが、北イタリアの一部は大陸性気候であったり同じ国内でも場所によってこれら気候条件に違いが見られます。

 

次に土壌条件ですが、どんな土壌であれ適度な水分保持能力と水はけの良さが最低条件です。

 

土壌素性としては、粘土質土壌やローム質土壌、砂利質土壌、石灰質土壌、粘板岩土壌など産地によりさまざまですが、とにかく水はけの良さが重要であり、あとはそれぞれの気候条件や土壌の特徴に合わせた品種選びによって優れたブドウが栽培できると考えられています。

 

そのほか、土壌pHは微生物活動の観点からも5.5から7.0の弱酸性から中性のpHレベルが理想的であり、栄養成分は窒素、リン、カリウムなどの微量元素などがバランスよく含まれていると良いとのことです。

 

そのほか、重要な要素が多数存在しますが、ブドウ栽培に理想的な条件をざっと考えると上記内容が当てはまります。

 



ワイン用ブドウと日照量について

 

優れたワインを栽培するための条件のひとつに、日照量があります。

 

上記でお伝えした要素を全て兼ね備えている産地であっても、日照量不足、または過渡な日照量のもとで栽培されたブドウは質が低下すると考えられているようです。

 

では、優れたブドウを栽培するためには、どの程度の日照量が理想的なのでしょうか。

 

ワイン用ブドウと日照量について下記で解説していきます。

 


南向きの斜面が理想的


 

ブドウは、落葉生のつる植物に分類されています。

 

結実した果実、さらにそれを加工したワインといったかたちで食物としてのイメージが強いですが、フルーツということは植物であり、健全に育てるためには適度な日照量が必要です。

 

同じワイナリーであってもランクが上のワインの場合、日照量豊富な南向きの斜面で栽培されたブドウを使用などと記載されています。

 

東から南、そして西へと沈んでいく太陽のルートを想定すればわかりやすいですが、南向きの斜面が最も日照量を豊富に浴びることができる場所です。

 

平坦な土地より斜面であれば植えられているブドウに満遍なく日照があることからも、世界の優れたブドウ畑は、南向きの斜面に点在しています。

 

ブドウは植物であることから光合成が必要であり、東向き・西向きではなく、南向きの斜面であることで理想的な光合成サイクルになると考えられているのです。

 

ちなみに、ブドウ生育期における理想的な日照時間は1,300時間から2,000時間と言われており、それら条件であれば優れたブドウを収穫できると考えられています。

 


ブドウの質を高める


 

理想的な日照量によって、ブドウの質が高まると言われています。

 

まず、黒ブドウの場合はワインの色合いを決定づけるポリフェノールの一種、アントシアニンが日照量によって増えると考えられています。

 

そのほかに、日光はタンニン、フラボノイドをはじめとしたフェノール化合物の生成を刺激し、複雑性やテクスチャーに貢献します。

 

そのほか、ワインの香りや味わいに大きな影響を与えるテルペン類などの芳香化合物の発達を促進するため、より複雑で風味豊かなワインが仕上がるのです。

 

上記で光合成の話が出ましたが、ブドウの葉が十分な太陽光をとらえることでそのエネルギーを糖に変換し、それが房へと運ばれ成長と生育が促進されます。

 

そのほか、ポリフェノール量や酸などにも日照量は大きく影響するため、日照量はブドウの質を大きく左右する条件と言っても過言ではないでしょう。

 

とくに寒冷地の場合、ブドウが豊富な日照量が得られるという状況は必須条件と言えます。

 


日照量は多ければ多いほど良いか?


 

ワイン用ブドウの質を高める上で、日照量は重要な要素であることがわかりました。

 

しかし、それらを考慮した時、日照量は多ければ多いほど良いと考える方もいるはずです。

 

しかし、ただブドウ樹に日光を当て続けていれば優れたブドウが収穫できるわけではありません。

 

まず日射量が多すぎる場合、ブドウが日焼けしてしまう恐れがあります。

 

さらに日照量が多いことでポリフェノール量が多すぎたり、糖分が高くなりすぎるといった懸念もあるでしょう。

 

また、日光の量はブドウが生育するサイクルを見ながらタイミングよく行うことが必要です。

 

生育時期により豊富な日射量が必要になったり、適度な日射量が必要であるなど、放置していれば良いわけでもありません。

 

葉陰を減らすキャノピー・マネジメントと呼ばれる日照量のコントロールなど、適宜行う必要があります。

 

さらに日照量と切っても切れない関係が、気温です。

 

気温が高い地域は日射量が豊富ですが、糖分が急激に高まり酸が極端に減少するため、注意しないと甘ったるい高アルコールワインができあがってしまいます。

 

タンニン量も過渡に豊富であり、超フルボディワインとなってしまうため垢抜けない印象に仕上がってしまうでしょう。

 

一方、冷涼な産地は日射量が少ないため、できる限りブドウに日光が当たるような日射量コントロールが必要です。

 

熟さず、酸が豊富過ぎる未熟なブドウになってしまうほか、フェノール含有量や芳香化合物の含有量なども少なく、中途半端なワインに仕上がってしまいます。

 

ちなみに豊富な日照量はアントシアニンの蓄積に一役買っていると言われていますが、気温が高すぎる環境下で育った場合、アントシアニンの蓄積が逆に遅れてしまうようです。

 

ワイン用ブドウが良い状態で生育していく上で日照量は重要な要素ですが、多過ぎても少な過ぎても問題が発生します。

 

ブドウにとって理想的と言われている条件が揃っていても、細部にまで注意を払わなければ宝の持ち腐れとなるわけです。

 

どんな状況下であっても優れたワインを生み出すワイナリーは、優れたワイン醸造テクニックを持っているだけでなく、ブドウ栽培能力も一流。

 

優れたワインには、それなりの理由があるのです。

 



まとめ

 

ワインの原料となるブドウは、そのワインの質を大きく左右する存在です。

 

そのため、優れたワインを見つけるためには、原料ブドウがどういった環境で育てられていたのか確認する必要があります。

 

その中でも、日照量はブドウの質を大きく左右するポイントであり、気温条件はどうか、畑はどちらの方角を向いているのか、どういった手入れがされているのか、それらをチェックした上でワインを選んでみても良いでしょう。

 

原料ブドウがどれだけの日光を浴びてきたか、ワインを購入する上であまり気にしない部分だと思いますが、機会があればチェックしてみてください。